[美穂のDIARY]
(この文は、吹奏楽をやっていた高校生、Mihoが書いたものを、本人の了解のもとにそのまま載せてあります)
ある日突然、日記を書こうかなって思う。それは他の誰でもない自分に話しかける時かなあ。でも、そんな時の自分って必ず素直でね、思ったことをそのまま書けるんだよね。だから私も、今の素直な気持ちを日記に書こうと思う。
今日、ある男の子の相談を受けた。今までもう2年間もつきあってきたのに、男の子は、しっくりきていない…との事だった。確かにその相手の子を好きだった時期もあった。車の免許をとって二人でどこかへ行こうねっと語りあったこともあった。でもそれはほんの一時期、短い間だったと言う。そして今はもう男の子の恋は終わったと。でもね、私はその子に何もいうことが出来なかった。なんかすごーくその子の気持ちが分かる気がして…。悲しいけど、人間ってそういうはかない面を持っていると思うの。だから私はあなたが思うままにしなさい、って言った。そして、私はその男の子と同じ気持ちだったであろう昔の彼、徹のことを思いだした。
私達が出会ったのは…(おおもとの始まりは、幼なじみだったけど)高校2年生文化祭の後だった。ふとしたきっかけに、M高と交流会をすることになった。そして、そのmemberの中に徹の名前もあった。昔から私達は、仲がよくて、グループ交際のように、ワイワイとやっていた。だから、徹の事は十分知っているつもりだった。でも、交流会の日に会った徹は、私を驚かせた。
"徹の容貌"……そうだったかもしれない。でも、その時の私は、それだけではなかったようにも思う。
10月13日…少し早目かなって思う告白だった。でも
2日後に修学旅行をひかえて、たまらなく徹が恋しく思えた。6日も姿がみれないのかぁ…なんかさびしいなぁつて思った。だから、私は思い切って言うことにした。夜の9時をまわっていた。二人とも部活で十分疲れていたけれど…返事はYes, of course!だった。毎日楽しくて仕方のない毎日が続いた。 (これこそ"バラ色のような毎日"って言うのかなぁ)本当に楽しくて、彼…徹も私に優しかった。
彼がアンサンブルコンテストに出場するとかでK市の方まで行ったり、クリスマスコンサートの時、夜遅くまでケーキを作ったりした。
そして、クリスマス・イブ……
手編みのマフラーをあげた。そのマフラーというのは―ケ月も前から編み始めたから、2週間も前に出来上がっちゃつて、ラッピングはどうしよう…とか、クリスマスカードはどうしよう…とか、いろいろ悩んだりもした。でも、こういう悩みって幸せな悩みだよね。楽しみながらプレゼントしたんだ。それで、彼からはオルゴールをもらった。手でまわすと楽しいMusicが流れてきて、とっても嬉しかった。そしてその晩は、明日の約束をして別れた。
12月25日… Christmas
二人はDisney Landにいた。何もかもが夢のような世界だった。二人で手をつないだまま、時がとまってしまえばいいなぁ……と思った。彼はいつもより数倍かっこよかった。やさしかった。少なくても私はそう思った。そして、その日は、私の心の中で忘れられない思い出になった。
でも、それから先…もつれあう毎日だった。喧嘩もした。戻ればまた、すぐ喧嘩だった。もつれあって、もつれあって……そんな数ケ月が過ぎた。辛かった。本当に辛かった。でも彼にはそのもつれが何であるか、その時から気づいていたと思う。そう…実際彼は気づいていた。だから私もそれに気づいて何度か決意した。このままじゃ悲しいだけ…だから別れようって。
でも私、別れたいと思っていたわけじゃなかった。ただ私も本当に好きでもないのに付き合っている、というのは嫌だった。(でも誰でも嫌だよネェ)
私を見ていない彼に、私は不必要だった。でもその時、彼は言った。「オレはまだ美穂のことが好きだから」って。
でもさぁ、そのときに言ってくれてよかったのにね。「私のことが好きではないから」って。でも私も、本当に私のことを思っていないことに薄々気がついていたのだけど…(これが俗に言う女の直感ってやつかなぁ)
6月になって、お互いに定期演奏会を迎えることとなった。そのころ、私達は大分会っていなかった。彼は今ごろどうしているかナァ…そう思いながら練習に励む毎日だった。でも、私は大丈夫だろうと思っていた。会わなくたって嫌いになったりしないよね、そう思っていた。
私の定期演奏会…6月19日
1200人の聴衆と、長い間会っていなかった彼のために吹いた。緊張した。口も手もガタガタに震えていた。でもこの会場のどこかに、彼がいるだろうと思った。だから、私なりに成功を得ることが出来たのだと思うけど。演奏会終了後、彼を見たときポロッと涙がこぼれた。それは、緊張がほどけた一瞬でもあり、またしばらく会っていなかった彼への思いからだった。
「よかったよ!ほんとに。オレあそこまで吹けるって思わなかったよ。」
そう優しく言ってくれた彼…
「ウン。ありがとう。」
と、答える私。
でもその幸せのなかに、これからくる予期せぬ事態…を考えることは出来なかった。
予期せぬ事態―それはちょうど一ヶ月後にやってきた。もう以前のような二人ではなく、なにもかもが閉ざされてしまっていた。
ポストにおちた一通の手紙…こんなにも重く、悲しい便りは初めてだった。
「君のことが本気で好きになれなかったのでしょう。でも君は本気で好きになってくれた――」
それを読んだとき、もうどうにかしてしまいそうだった。
(本気で好きなんじゃないわよ。なにをいうのよ。うぬぼれてるんじゃないわ)そう心に言い聞かせた。私はとても悔しかった。でもそう思えば思おうとするほど、悲しくなって涙をこぼした。
「悲しまずに別れようよ 二人は幼なじみの仲じゃない」という彼の言葉も関係なく…。
しばらくは、ポケッとした日が続いた。なんかじっと我慢して、(何をこらえているのか、自分でも分からなかったけど)私にしては珍しいほと口数が少なかった。
夏のコンクールの2日前かなっ………ついに気持ちが爆発しちやって、後輩の前でワーワー泣いちゃって練習どころではなかった。でも、その後少し気持ちに余裕が出て 段々自分が取り戻せるようになった。
しっかり諦めていたと思っていた9月。
私の心はまた動揺するようになった。それは、文化祭のバンドのライブでのことだった。彼に事前に手紙を出していた。でも、結構軽い気持ちだった。絶対来ないだろうナァとおもっていたから。でも、5曲目が終わったぐらいで徹に似ている人を見つけた。私の錯覚かなと思った。でも、終わってから客席へ足を運んでみると、やはり徹だった。なんかとっても、複雑な心境にかられた。嬉しかった…のかなぁ。でも、そのときの私は自分の気持ちに気が付かなかった。ただ一生懸命彼と話そうとしていた気がするけど。
文化祭が終わってズーズーしくなる自分に気づいた。ズーズーしいって何が?
あの人に対して。もう彼でもないのに彼の様な気がして、すごく親しみがわいて。今なら何でも話せると思った。元に戻れると思った。そして、まだ徹のことを忘れられずにいる自分自身に気づいた。でもやっぱり私は好きなのかも…好きじゃないかも…って悩んでいた。 (こういうのを情緒不安定っていうんだよね。)でも、やっぱり私はこの人が好きなんだ、と思い始めた。そして、今まで悩んでいた期間もこの人のことが好きだったことに気づいた。私がそのことに気づいた時には、もう入試の1ヶ月前をきっていた。入試のことや、友達とうまくいっていないことなどもあって、再び情緒不安定の日々が続いた。
入試の3日前…ふとtelに手をかけた。回したnumberは、何故か彼の家であった。1回…2回…とcallするたびに、心臓がドキドキして、昔のことを思いだした。
懐かしい声だった。なんか、ホッとした。それにしても、久しぶりの会話だった。私は、そのtelのなかで、明日会って自分の気持ちを伝えようと思った。別れてから4ヶ月……も経っていたけれど、変わらない自分の気持ちを。 (徹の気持ちがどうであろうと私には関係ないって思っていたけれど。)それで、「明日会える?」って聞いてみた。向こうもウーンなんて言っていた。でも、そのあとで「アッ、でも話しによっては会いたくない」って言った。二人の間に沈黙が統いた。そして、 「二人とも傷つくことになると思うよ。それに、オレの気持ちは手紙に書いたとおり、今もかわらないよ。それに、そっちはもうテスト前なんじゃない?」
telのこっちで聞いていた私は、止まらない程の涙を流した。泣いちゃいけない、どうしてなくんだよおと思った。あなたの気持ちを聞こうと思ったんじゃないはずよ。しっかりしなきゃ!そして、「ちがうの」って言った。私には、それで精―杯だった。
「何がちがうの?何が聞きたいの?」
「………。」
「でもオレわからないよ。きちんと言ってよ。」
私は、涙が出てきて、喋ろうと思っても言葉にならなかった。落ち着こう、落ち着くんだ、そう自分に言い聞かせた。向こうもそんな私の気持ちに気づいてくれたみたいだった。
「あなたの気持ちを聞こうと思ったわけではなかった。ただ私は、自分の気持ちを伝えようと思っていただけだった。」
「何となく分かっていたよ。美穂の気持ち、Kから聞いていたんだ。」
私は、自分の気持ちを誰かに言っていたわけではなかった。Kに聞かれたこともあった。でも、私は違うよって言っていた。だから、自分の気持ちは誰にも伝わっていないはずだったけど…。隠していても分かってしまうものなのかナァと思った。それとも、それだけ私はアイツのことが好きだったのかなあって。
その日はそれでtelを切った。でも、もうすっきりした気持ち、すがすがしい気持ちだった。何故だか分からなかったけど、おかげでしっかり試験を受けることができた。
「試験に受かっていたら、telするから」
そういったものの、試験に受かっていたことが分かってからも、徹にtel することはなかった。私の彼に対する恋は、本当に終わったのだった。
人が人に恋をするってことは、命がけだったりする。自分自身がどうなってしまっても、相手のために尽くしたりする。でもその恋が正しいものだったのかどうかは、終わってみなければわからない。いや、終わってみても分からないかもしれない。でも、私はその時に精一杯相手を好きになれれば、いいんじやゃいかなあと思っている。曲がった恋も、まっすぐな恋も、それは自分にとっては、最高の恋なのだと思う。
End