【ちさと 2】

「結婚って、男の人にはあまり現実感がないのかなあ」って言ってるのはちさと。1年以上も、電話一本よこさずに、久しぶりに会ったと思ったら、これだ。俺はおまえを普通の女の子に変えてしまった男がいるということにショックをうげているんだぞ!

それは、うれしいけどね。おまえが普通の女の子になれたということは喜んでるよ。俺ができると思っていたわけではないしね。いつか誰かがそうしておまえを普通の女の子にしてくれるんだろうって、待っていたよ。だけど、それが現実に目の前に現われると、じつに複雑な気持ちになるんだよ。まして「結婚」なんて。

………女の子を持つ父親の気持ちがよくわかる。

彼がいろんな意味でいい男だというのはよくわかる。彼に会う前に聞いた話でもそう思ったし、彼に会って、いっそうその気持ちが強くなった。おまえの本質を見抜くほどの男だから、同年代の中でもしっかりしたほうだろう。理屈ばかりで頭が膨らんで、現実に対応できないような見かけだけのエリートではなさそうだ。生活力もありそうだ。そして、なによりもおまえを愛していることが初対面でもよくわかった。

………だからこそ、結婚には慎重なのだろう。

彼が結婚ということに対して慎重なのは、先までよく見通して、じっくりと自分達の生活設計をたてて行きたいのだろう。だからおまえも、あせったりせずに落ち着いて彼と歩いていくことだね。

しかし、まだまだ難関が多そうだな。おまえが父親に彼のことを話していないというのはなんとなくわかるような気がする。なにしろ、これまでのおまえのつきあいかたを見ていたら、信用しろというほうが無理だもんな。よく母親が(しぶしぶだったらしいが)認めたよな。まあ、とりあえずはお母さんを味方につけることだな。その上で、お母さんと一緒にお父さんに話をするんだな。

それまで、彼との行動は慎重にな。一度身休を許したからって、そのままズルズル行ってしまうようでは信用されないよ。

おまえ達は二人ともこれまでにいろんなことを終験してきた。それをこれからの糧として、じっくりと生活設計をたててほしい。二人とも同じような夢を持ち、二人ともその多くはかなえられなかった。そして、二人ともそれを乗り越えて成長してきた。そんな二人だからこそ、これからは落ち着いて愛を育んでほしい。俺だけでなく、おまえ達が幸せになるのはおまえ達の周りのみんなが望んでいることなのだから。

 

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