【まゆみ】

受験の1ヶ月前に彼からの別れ話。それ以来勉強が手につかず、泣いてばかりいたっけな。

恋と勉強は別、なんていうのは建前でしかないんだよな。

そんなときに勉強にうちこめるやつなんて、いないよな。

いたとしたら、たいした恋じゃなかったんだよな。

彼が大阪に行ってしまって、「それでも、メールがあるから」って、幸せそうにしていたおまえ。

修学旅行で見学時間の合間を縫って、彼と会っていたおまえ。

文化祭で、わざわざ大阪から出てきた彼と楽しそうにしていたおまえ。

そしてその夜、彼を家に泊めて夜まで話していたと嬉しそうに言っていたおまえ。

それから1年。おまえと彼の間にどんなことがあったのか、俺は知らない。

やはり、大阪までの距離があまりに遠すぎたのか。

電話だって、思うようにはかけられなかったろう。

メールだけのやりとりでは、やはり心をつないでおくのは無理なのか。

彼が、後輩の女の子のことを「妹みたいでかわいい」って言っていたと心配そうに俺に話したのは12月になってからだったろうか。

そのおまえの心配が、しだいに現実のものとなっていった。

それでも彼が受験で東京に出てくるということに、僅かな希望をつないでいた。

俺も、彼がまた東京で生活を始めれば………と思っていた。

……しかし、彼は出てこなかった。

そして1月の別れ話。

ひとに泣き顔なんか見せたこともなかった誇り高いおまえが、俺の前で泣いていた。そんなときに言葉なんかないんだよな。

俺もありふれた言葉しか出てこなかった。それでもおまえは「先生と話して、少し楽になった」って言って帰っていった。

本当は言葉なんかいらなかったのかもしれないな。

俺はおまえの泣き場になれたのかな。

それならそれで良かったんだ。

 

 

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