【死を望む女の子】
自分の死を望む女の子がいた。
彼女が何を自分の罪として背負っていたのか、ついに俺には分からなかった。
彼女は自分の罪について、何も話さなかった。
彼女自身も分からなかったのかも知れない。
友達が死んだとき、「私が代われれば良かったのに」と彼女は言った。
そのとき彼女は本当に代わってほしいと思っていたのだろう。
彼女にとって、死は願いの成就であったはずだ。
彼女の原罪は何なのか。
彼女は何から逃れようとしているのか。
俺にはどうしてもわからなかった。
どうすることもできなかった。
友達が死んで3年。彼女は「お墓参りがしたい」と言いだした。
俺は、彼女の中に得体の知れない「死」というものにとり憑かれている彼女を見た。
彼女は俺に連れて行って欲しいのだ。
そうしなければ自分に憑いている死神にとり殺されそうな自分自身を、彼女はどこかで感じていたのだろう。
俺は彼女を墓に連れていった。
彼女は1時間半も墓と向き合っていた。
俺は、離れたところで彼女を見守っていた。
これが何になるのか。こんなことをして、何の役に立っのか。
そう思わないでもなかったが、このときはそうするしかなかった。
その後で、俺は彼女を山に連れていった。
切り株に腰をおろして話をした。
彼女は相変わらず心を開かなかったが、それでもよかった。
とりあえず、死神から引き離せばいい。
彼女の心を開くのは、俺の役ではない。
喫茶店や車の中などの閉じた場所で話をしたくなかった。
死神を日の光にさらしてやりたかった。
先生へ
こんにちは。今年は年賀状も出さなくてすみませんでした。先生もきっと大忙しだったのではないかとおもいます。受験シーズンもそろそろ終わりますね。笑ったひと、泣いたひと、それぞれいろんな思いで春を迎えるんですね。
私もひと事とは思えないものがあって、喜んだり残念に思ったりしています。まだどこもうかっていない友達が何人かいて、ちょっと心配なところです。
それはさておき。お話ししたいことがたくさんありすぎて、何から書いていいかわからないほどです。でも、今一番話したいことは現在のことなので、それまでのことは本当にごく簡単にお話しすることにしますね。
大学に入って、先生と山にドライブに行きましたよね。あれは6月22日でした。その後、26日が私の誕生日だったのですが、どうしたわけか今までのことを思い返しているうちに、急に空しくなってきて、どうにもこうにも手がつけられなくなってしまいました。学校もやめようと思うまでに一日もかかりませんでした。誰にも相談せず、学校に置いてあった教科書、上靴など全部持ち帰って、退学届けに名前を書き、親に渡しました。
結局話し合って親と先生に丸め込まれるような形で退学の話しは取り消され、病院通いのために欠席ということにして二週間ほど休み、復学しました。でもそれ以来、ずっと自分との闘いで何があっても苦しみ、悩みました。そして、とうとう疲れきって、いつのまにか「どーでもいいよ」 「何とかなるんじゃない」が口癖になり、自分自身が冷えていっているのがわかるようになりました。
でも、このごろはちがうんです。とっても満ち足りているんです。「君の、南極の氷のような心を溶かしてみせるよ」と言ってくれる人がいるんです。はじめは、遊びのつもりでドライブの誘いにのりました。でも一日いっしょにいて、本人どうしもびっくりずるくらい強くひかれてしまって、どうしてもっと早く気づけなかったのだろうってくやしくなる位でした。
その人は4つ上の23歳で、バイト先の社員さんです。お店のオーナーや店長、パートの人達にそろそろ気付かれ始めているのですが、「必要になればきちんと話す。誰にも文句は言わせない」って言ってくれます。その人は私のことを本当に「愛しています」と言ってくれて、私のために泣いてくれるような人です。本当に本当に、この人と出会ってよかったと思います。人から愛されるって、こんなに幸せなことなんだなあと実感しています。私の中にある、苦しみやあきらめや不信感のようなものが徐々に溶けてなくなっていくのがわかるんです。
今、左手のくすり指、予約中です。
何だかのろけてしまって申しわけないんですが、本当の気持ちです。こんなこと、彼氏のいる女の子は誰でも同じかもしれないけど、やっぱり私は特別幸せです。
今、あきらめていた専門職への道をもういちど歩きだしています。幼稚園の先生か、保育園の保母さんか、まだ決まってはいないけれどがんばります。もしも先生の生徒の中にこういう仕事をしようとしている人がいたら、こういう風に言ってあげてください。
「人を愛するには、まず自分が人から愛されていなければいけない。」
また新しい一年が始まります。春がうれしかったのは今年が初めてです。先生にもすてきなことがたくさんありますように。奥様にもぜひよろしくお伝えください。
さようなら。
麗子
P・S お墓にもちゃんと報告してきました。もう大丈夫です。
この手紙をもらってからもう5年。
彼女はこのときの彼と結婚して、今、北陸の町で二人でコンビニを経営している。
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