【Yukaちゃん】


Yukaちゃんは今、秘密交際中。
秘密にしている理由は、相手が自分の学校の先生だから。
Yukaちゃんは高校1年の時に生物の先生を好きになった。
先生と一緒にいたいという、それだけのために部員の少ない生物部に転部した。
夏休みには毎日のように学校へ通って文化祭の発表の準備をした。
先生といっぱい話したいのに、先生の前に出ると緊張してしまって、ほとんど話ができないといって悩んでいた。
でも、「先生と一緒にいられるから幸せ」って言っていた。
写真の好きな先生のために、写真のモデルもやった。
(俺はこの頃から先生もYukaちゃんのことが気になっていたんだと思うんだけど)

告白したのはクリスマス前。
俺は用事を作って、特別棟の隅にある音楽室に相手の先生を呼んだ。
先生が俺との話が終わって生物室に帰る途中でYukaちゃんが待っているという作戦だった。
夕方、暗くなって人気のなくなった特別教室棟の廊下で先生を待っているYukaちゃんは怖かったんじゃないだろうか。
結果は………「ありがとう」のひと言だけ。
Yukaちゃんは俺のところで涙を流していたけど、俺は期待の持てる返事だと思っていた。
Yukaちゃんは、そういう俺の言葉を信じていなかったけど………。

冬休みがいい気分転換になって、Yukaちゃんは3学期からまた熱心な生物部員として生物室に通っていた。
Yukaちゃんは、先生は告白前とぜんぜん変わらないと言っていたけど……。

バレンタイン。
俺はYukaちゃんを励まして、手作りチョコを持って行かせた。
結果はまた「ありがとう」だけ。
またYukaちゃんは俺のところに泣きに来た。
俺も今度は「だめかもしれないな」と思った。
でも、望みは捨てるなとYukaちゃんには言った。
Yukaちゃんは、先生の顔を見るのが辛くなっていたみたいだった。

3月、一日早いホワイトデーのお返しを先生がくれた。
Yukaちゃんはもちろん大喜び。
一方で、先生との別れも迫っていた。
先生は臨時採用の講師なので、1年しかこの学校にいられない。
あと2週間でお別れ。
Yukaちゃんはその事を知ってまた泣いた。

4月になって、新しい先生が来た。
Yukaちゃんは、その先生があまり好きではなかった。
生物部は辞めなかったけど、あまり部活には行かなかった。
でも、部員が少ないので結局は部の活動に呼び出され、友達とのつきあいもあってサボりながらも部活動は続いた。
部の活動でわからないことや困ったことがあると、今の先生ではなくて、前の先生にメールで質問した。
先生の声を聞きたくて電話もした。
そして、Yukaちゃんの質問に答えるため、ということで先生はYukaちゃんと一緒に博物館に行ってくれた。
それがきっかけで、二人で生物の採集に行ったり、図書館に行ったりするようになり、夏休みにはドライブに行くようになった。

俺はYukaちゃんに、もう一度きちんと告白してごらん、と言った。
Yukaちゃんは怖がっていたけど、俺は先生ははっきりした形で交際を始めるチャンスを待っているんだと思っていた。
……それから先のことは俺はあまり詳しくは知らない。
(誰でもそうだけど、うまく行くようになると、あまり相談に来たり話しに来たりしなくなるものなんだよ)

そしてYukaちゃんが3年になった春、なんと先生が正式採用になってYukaちゃんの学校に赴任してきた。
理科教員の採用はとても少なく、しかも、もといた学校に来るなんていうのは奇跡に近い。
Yukaちゃんは喜んだけど、俺は困ったことになったなと思った。
先生が自分の学校の生徒と交際するというのはタブーだ。
バレたら彼は間違いなく飛ばされる。
だから、Yukaちゃんには二人の交際を絶対秘密にしろと言ってある。
両親はまだ知らない。
友達の何人かは知っている。(俺はこれがいちばんこわい)
先生で知っているのはもちろん俺だけ。

Yukaちゃんにとって、この1年はつらい1年になる。
友達や知り合いに会う可能性のあるところに二人で行くことはできない。
だから、デートはたいていロングドライブだ。
学校での会話にも気をつけなければいけない。
先生と生徒として会話すればいいのだが、油断がこわい。
ちょっとした会話や二人の視線がきっかけで、誰かが二人の関係に気がつくかもしれない。
(こういうときのオンナの勘をあなどってはいけない)

ただ、この辛い1年を乗り切れば、公然と交際することができるようになる。
おもしろいもので、先生と生徒との交際にはうるさい世間も、卒業生と先生との交際にはそれほど厳しくあたらない。
現役の時からのつきあいだとわかれば、何か言われるかもしれないけどね。

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この話、実際には数年前の話を現在形で書いています。
二人がこのあとどうなったか………

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【Yukaちゃん おめでとう】

今日、うれしい知らせが届いた。
この話のモデルになったYukaちゃんから「6月に結婚するので、式に出てください」って連絡が入ったんだ。
もちろん、喜んで出席させてもらう。
8年前の恋に始まり、6年間の交際を経て結婚。……長かったね。
その間いろいろなことがあった。とくに、Yukaちゃんの両親の説得には苦労したね。
でも、あきらめずに説得して認めてもらえて、よかったね。
20歳過ぎれば両親の了解を得ないでも結婚できるとはいっても、やはりできることならみんなに祝福されて結婚生活をスタートさせたいよね。
結婚式のスピーチでは何を話そうかな。
俺は、結婚式のスピーチはいつもアドリブで、事前に話すことを考えたりはしないんだけど、Yukaちゃんの場合は特別だからなあ。
何を話そうかなって考えるだけでも楽しいよ。
6月の結婚式、とても楽しみだ。

2004/3/8.夜

(【Yukaちゃん】に書いてある話は、Yukaちゃんと、もう一人の別の女の子の話を混ぜてあるので、細かい部分ではYukaちゃんのケースと違っています。Yukaちゃんが本当は誰だか知っている人は、そのことに注意してください。)

 

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